えのさんの琉歌ものがたり

「琉歌」って知っていますか?知っているけど、今はそんなになじみがないと思っていませんか? 知らなきゃもったいない、意外と面白い琉歌のことをわかりやすく解説します。

季節の歌 秋

紅葉の歌

10月も半ばです。
秋ですね。
秋といえば、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。
美味しい食べ物、読書や芸術、スポーツなどいろいろありますね。
今回は秋といえばこれでしょう!ということで「紅葉」の歌を紹介します。

そもそも沖縄にはほとんど紅葉する植物はありません。
しかし、例外があります。その代表的なものが「ハゼの木」です。

ハゼの木はウルシ科の植物で、沖縄の森の中でもよく見られます。
そして、冬になると赤く紅葉します。
緑の中に鮮やかな赤が浮かぶ様子は琉歌にも詠まれています。
琉歌の中の「紅葉」はだいたいが「ハゼの木」を指します。

さあ、この紅葉の歌にはどのようなものがたりがあるのでしょう。
ものがたりをはじめましょう。

神村親方という方がいました。親方(うぇーかた)というのは役職の名前で、今でいう長官みたいな役職です。
その人が内兼久山(うちがにくやま)のそばの家を通りかかった時でした。
家の中で若い女性が布を織っているのが見えました。
女性は大変美しく、神村親方は思わず足を止めて見入ってしまいました。
しかし、身分のいい人が、女性に見とれていたとは言えません。いい噂の種となってしまいます。
そこで、神村親方は紅葉に寄せて歌を詠みました。

いすぐみち ゆどぅでぃ(急ぐ道ではあるが)
みるふどぅん ちゅらさ(見れば見るほど美しい)
うちがにくやまぬ(内兼久山の)
はじぬ むみじ(ハゼの紅葉よ)

こう読むことで「私は女性を見ているのではない。きれいな紅葉を見ているだ」と示しているわけです。
偉い人でも人の子。美人には弱いようです。

また、この歌には別のお話もあります。
与那原親方良矩(よなばるうぇーかたりょうく)という人の話です。
彼は優れた文学者で、たくさんの琉歌を残しています。
その人が用事の帰り道で、これまた内兼久山を通った時に、なんとハゼの木で首をつって自殺してしまった人を見つけてしまいました。
当時は見ていることを死体に知られると、祟られるという言い伝えがあったようです。
そこで、与那原親方はさっきの歌を詠んで「私はあなたを見ていない。紅葉を見ているんだよ。」と思わせ、祟りを回避したというお話もあります。

そして、「ハゼの紅葉」の歌としては、以前書いた「幽霊が詠んだウタその1 よしや ( http://enosan.ti-da.net/e9796871.html )」にも、


いすぐみち ゆどぅでぃ (急いでいる道なのに道草なんて)
みぬふどぅん つぃらさ(身の程が辛い)
うちがにくやまぬ(内兼久山の)
はじぬ むみじ(ハゼの紅葉よ)

という歌があります。
ちなみに、「内兼久山」は、那覇市の久米にあり、ハゼの木が多くあったようです。

では、今回はここまで。
ハゼの木に興味がある方は調べてみてください。

次回は2番目の話に出てきた、与那原親方良矩のお話。
ご期待ください。


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琉歌とカメと家族をこよなく愛するアラフォー女子(*´∀`)
今日もバタバタと東奔西走(^-^)v

沖縄の素晴らしい琉歌を、分かりやすく楽しく伝えられたらいいなぁと思っています(^-^)