奄美大島のウタ その2 かんつめ節

河合えの

2017年08月19日 21:53








奄美大島の歌はたくさんありますが、今回紹介するのは「かんつめ節」です。
「かんつめ」とは女性の名前で、地域によっては「かんてめ」「かんちめ」「かんとみ」とも言われるそうです。
この歌はかんつめさんの悲しい話を歌った歌なのです。
では、ものがたりをはじめましょう。

奄美大島の宇検村名柄の豪農の夫婦の家。
そこで「ヤンチュ(家人。身売りされた奴隷)」として働いていたかんつめ。二十歳頃の美しく気立てのよい娘でした。
そして彼女には隣の久慈の役所の筆子(書記役。)の岩加那(いわかな)という彼氏もいました。
岩加那は歌三線が上手で、かんつめは踊りが上手い。二人は毎夜のように佐念山の小屋で歌い踊って遊んでいたそうです。
ただ、岩加那はエリートでかんつめは奴隷。身分の差があることから二人の関係は秘密にしていました。

しかし、そんな幸せも長くは続きませんでした。
雇い主の旦那が美しいかんつめに横恋慕したのです。
もちろん、かんつめは岩加那がいるので相手にしなかったのですが、奥さんは薄々気付いていたのかかんつめに辛く当たっていたようです。

さらに悪いことに、岩加那との関係が雇い主夫婦に知れてしまいました。
奥さんは激怒。かんつめをリンチし、さらにはかんつめの陰部に真っ赤に焼けた火箸をあてたのです。
美しい顔や体はあとかたもないほど傷だらけ。思い詰めたかんつめは、岩加那との思い出のある佐念山で首をつって自殺してしまいました。

その後、岩加那はかんつめの遺体を発見し後を追って自殺してしまいます。
また、雇い主夫婦は不幸が重なり、没落してしまったということです。

奄美大島の久慈から名柄にいく道の途中に「かんつめ節」の歌碑があります。
歌碑に記された歌は以下のとおり。()は私が意訳しました。

ゆべがであすだる(夕べ遊んだ)
かんつめのあごつくわ(かんつめ姉さん)
あちやがゆねや(翌日の夜には)
ぐしゆが道いじ(あの世の道で)
みそでふらそ(袖をふっている)

かんつめや名柄(かんつめは名柄に)
岩加那や久慈(岩加那は久慈にすんでいる)
こいじへだてて(恋路を隔てていて)
うむいぬくつさ(辛い思いをしている)

作った人物や歌詞などは諸説ありますが、かんつめの死後に彼女がよく歌っていた「草薙ぎ節(飯米取り節)」をもとに作ったといわれています。
また、暗くなってからこの歌を歌うと、かんつめの幽霊が現れるといわれているので、地元では夕方からこの歌を歌うことはないそうです。

今回の奄美編はいかがでしたか?
このほかにもたくさんの歌やものがたりがありますが、またの機会に紹介しますね。

さて次回は、「かんつめ節」もでたし、旧盆も近いので「幽霊」をテーマにしてみましょう。
お楽しみに。

(写真は妹家族が撮ってきてくれました。遠かったのと、台風の土砂崩れなので行くのが大変だったようです。協力ありがとうございました!)

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