琉歌の中のオノマトペ

河合えの

2022年06月11日 21:15

お久しぶりです。えのです。
いろいろありましたが、再開させていただきます。
よろしくお願いします。

さて、今回は「オノマトペ」に注目して琉歌見ていこうと思います。
「オノマトぺ」とは、実際の音や物事の状態や動きを表した言葉を言います。
例えば、雨が降っている音を「ザーザー」とか、犬の鳴き声を「ワンワン」と言ったり、楽しみな気持ちを「ワクワク」と言ったりすることです。
どんな歌があるのでしょうか。
ものがたりをはじめましょう。

沖縄方言は標準語に比べてオノマトペが多く、ユニークなものとなっています。
一部を紹介すると、

 風が強く吹いている様子 → バーバー
 血が出ている様子  → ゴーゴー
 太陽が照りつける様 → クヮラクヮラ
 ヤギの鳴き声 → ベーベー

などがあります。
また、沖縄方言では「名詞+オノマトペ」という使い方が多いです。
上にある「ゴーゴー」の前に「ちー(血)」をつけて「チーゴーゴー」、心を意味する「チム」に「ドンドン」をつけて「チムドンドン」というようにです。

琉歌の中にもオノマトペを使ったものがいくつかあります。
しかし、全体的に数が多くなく、その大半が面白おかしく詠んだ狂歌です。
理由は詳しくはわかりませんが、おそらく使い方によってはカッコ悪くなってしまうからだと思います。
オノマトペは音や感覚をはっきり伝えることができますが、使い方を間違えると歌の余韻や風流さを奪ってしまったり、幼稚な感じになってしまうのです。
たとえば、恋人に会えずに泣いている様子を「枕を濡らす」というとロマンチックに聞こえますが、「シクシク泣く」というと幼稚でなんだか前のに比べるとカッコ悪く感じませんか?そういうことです。

最後に面白いオノマトペを使っている琉歌を5つ紹介します。
まずは有名どころを一つ。よしやの歌です。

しまん とぅなどぅなとぅ(島中がしんとして静かで)
くばん すゆすゆとぅ(こばの葉も風にかすかに揺れていて)
つぃなじあるうしぬ(繋いである牛が)
なちゅら とぅみば(鳴いていると思うと・・)

ここでは「とぅなどぅな(しんと静かな様子)」と「すゆすゆ(そよそよ)」が使われています。
オノマトペを二つ使っていますが、それがかえって故郷の素朴さとおおらかさが伝わってきます。
この歌はよしやが幼いときの歌だと言われていて、牛を盗まれた時にこの歌を詠んだところ、牛が鳴いたので牛を取り戻すことができたと伝えられています。

いかん つぃらりらぬ(イカもつれないし)
いゆん つぃらりらぬ(魚も釣れない)
さちふぃじゃぬ うちに(崎樋川の沖の船の上で)
ぬるんとぅるん(眠気が差してうとうとしている)

ここでのオノマトペは「ぬるんとぅるん(眠気が差している。うとうと)」です。
船の上でのんびりうとうとしている様子が伝わってきます。

くゎんわ やまとぅぐち(官話〈北京語〉と日本語)
うちな むぬがたい(沖縄語で話をしている)
ちゅい はなしばなし(それぞれ話している)
ぴりんぱらん(外国語をペラペラ喋っている)

中国語、日本語、沖縄語が飛び交っている様子を詠んだ歌です。
琉球王朝時代は日常会話は沖縄語を使いますが、士族などは教養として中国語や日本語もまなびました。
ここでのオノマトペは「ぴりんぱらん」です。
実際にその三つの言葉を同時に聞いたら、このように聞こえたんでしょうか。
面白いオノマトペです。

なまぬ ずりぐゎたが(今のジュリ〈遊女〉たちが)
ふぃちゅる さんしんや(弾く三線は)
うちゃくから じんぐゎ(お客からお金を)
とぅてんとぅてん(とったとったと鳴っている)

ここでのオノマトぺは「とぅてんとぅてん」です。
三線の音を表していますが、同時に取ったという意味の「とぅてん」をかけて詠んでいます。

いかがでしたか。
それぞれ効果的にオノマトペを使っていて面白い歌でしたね。
このほかにもいろいろなものがあるので、調べてみると面白いと思います。
では、今回のものがたりはおしまいです。

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