名護親方と蔡温

河合えの

2018年10月16日 23:03

お久しぶりです。
娘が生まれて3ヶ月。やっと少し子育てに慣れてきました。
そこで、「えのさんの琉歌ものがたり」を再開いたします。

今回は名護親方と蔡温の琉歌を紹介します。
この2人は17世紀から18世紀にかけての沖縄を代表する偉人です。
実は私の娘はこの2人にちなんで、名前をつけています。
娘の名前はここでは申し上げられませんが、復活第1号は絶対にこの2人の琉歌を紹介しようと思っていたんです!
まずは簡単に2人について説明します。

名護親方は 第ニ尚氏の士族で、程 順則(ていじゅんそく)という名でも知られています。
主な功績は、清から「六諭衍義(りくゆえんぎ。簡単に言うと、6つの道徳的な教えを解説したもの)」を持ち帰って、広めたことです。
これは日本にわたり、寺子屋で教科書としても使われました。
また、琉球最初の正式な教育機関「明倫堂」を設立し、琉球の教育に貢献しました。

そして、蔡温も第ニ尚氏の士族です。
彼は有能な政治家で、三司官の1人として自ら行動し、農業や林業、商業の政策などを行い、後の琉球王国の方向性を定めました。
また、風水を活用したまちづくりをしていて、名護のヒンプンガジュマルに、蔡温が建てた石碑にそのことがわかる文言があります。

さて、この2人はそれぞれ自分の人生観を詠んだ歌を残しています。
それぞれ見てみましょう。
まずは名護親方です。

ふみらりん すぃかん(褒められるのも 好かん)
すしらりん すぃかん(そしられるのも好かない)
うちゆ なだやすぃく(浮世を何事もなく)
わたい ぶしゃぬ(渡っていきたいものだ)

彼は控えめな性格のようです。
目立たず穏やかに生きていきたいという思いが見えます。
そして、次は蔡温の歌です。

ふまり すしらりや(褒められるのも そしられるのも)
ゆぬなかぬ ならい(世の中の常だ)
さたぬねん むぬぬ(何の評判もない者が)
ぬやく たちゅが(何の役にたつのか)

かなり挑戦的ですね。
穏やかな性格で道徳を説いた名護親方に、賞賛や批判を物ともせずに政策を進める蔡温。
ほぼ同時代に活躍した2人ですが、性格は正反対だったんですね。

さて、今回のものがたりはこれでおわり。
これからも、琉歌にまつわるものがたりを語っていきたいと思います。よろしくお願いします。


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