王子とヤキモチ焼きな愛妾

河合えの

2020年06月01日 11:24

沖縄はコロナはとりあえず一段落したようですが、梅雨に入り、雨ばかりでジメジメしています。
さて、今回はこの雨に関係する話をご紹介します。
王子とヤキモチ焼きな愛妾のお話です。
さあ、ものがたりをはじめましょう。

第二尚氏王朝の五代目 尚元王の三男に尚久という方がおりました。
彼は金武間切(現在の金武町・恩納村・宜野座村・名護市の一部)を領地にしていたので、大金武王子と呼ばれていました。

さて、彼には妻とは別に美しい妾がおりました。
尚久は彼女をとても愛していましたが、ひとつ問題がありました。
彼女はとてもヤキモチ焼きだったのです。
どうやら彼女の出身は田舎だったようで、思ったことをはっきりと言う性格だったようです。
しかし、首里の貴族たちから見れば教養がないからと見られていました。

ある日、尚久は夜遅くに愛妾のところに行きました。
しかし、愛妾はすごく不機嫌そうです。
顔をみるやいなや、こう詠みました。

ぐすぃくから うりてぃ(お城からお出になって)
さるとぅちぬ かじり(申の時〈午前4時頃〉となっています)
たるに ゆくさりてぃ(誰に誘われて寄って)
なまでぃ もちゃが(今の時間になったのですか)

なかなかの嫌味っぷりです。
どうやら彼女は尚久が正妻と一緒にいたと疑っているようです。
王子は慌てて答えます。

ゆくさりん あらん(誘惑されたのでもない)
ふぃかさりん さらん(引っ張られたのでもない)
しぐく あみふてぃどぅ(すごく雨が降っていて)
なまでぃ つぃちゃる(今着いたのだ)

しかし、彼女は冷たい目で睨み付けてさらに詠みます。

しぐく あみてぃすぃん(すごく雨が降っていても)
とぅちぬまどぅ ふゆる(一時の間降るのです)
ちゃはるふる あみぬ(いつまでも降る雨が)
しけに あるえぃ(この世界中にありますか)

なかなか鋭いですね。
さてさて、このあとはどうなりましたやら。
かかれていないのでわからないのですが、想像してみるのも面白いですね。

では、このものがたりはおしまいです。
ちなみにこの尚久のお父さんである尚元王もエピソードがあります。
はじまりのウタ 「かぎやで風」 その1で紹介していますので、是非ご覧下さい。https://enosan.ti-da.net/e9743453.html

それでは、また。

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