奄美大島のウタ その1 諸鈍長浜

河合えの

2017年08月13日 22:32




はるばる来ました奄美大島!
妹家族に会いに行く目的できたのですが、ついでに琉歌の取材もしようと思ってました。
が、まさかの台風5号の影響でいろいろなところが土砂崩れを起こしているようで行くのが難しいのと、日程の都合がつかず、歌碑巡りは断念。
前回にひきつづいてまたしても・・・。日頃の行いが悪いのかな(笑)
ま、また行くので歌碑巡りはその時にリベンジします。
で、今回は解説と、奄美の景色をお送りいたします。

奄美大島はかつては琉球王国の支配下にあったため、文化や芸能は沖縄とよく似ているところもあります。
しかし、王国の支配地域の中でも中央から遠かったからか、奄美大島独特の文化が花開きました。
琉歌も多くはないですが、奄美の言葉で歌われているものがありました。

奄美大島に関係する代表的な歌のひとつに「諸鈍節(しゅどぅんぶし)」があります。この歌は沖縄本島の古典舞踊の名作「諸鈍」使われます。
この舞踊は女性が恋人との一夜を回想する様子を手の動きと目線で表現します。とても艶っぽい舞踊です。
今歌われている歌詞は

まくらならびたる (恋人と枕を並べている)
いみぬつぃりなさや (夢を見たときのつらさよ)
つぃちやいりさがてぃ(月は西に沈み)
ふゆぬやふぁん (冬の夜の一人寝がことさらにわびしい)

ですが、もともとは

しゅどぅんみやらびぬ(諸鈍の娘さんの)
ゆちぬるぬはぐち (雪のように白い歯)
いちぃかゆぬくりてぃ(はやく日が暮れて)
みくちすわな (くちづけしたい)

という歌。ちなみに、琉歌でキスのことを歌った歌はこの歌のみ。昔の人もキスしたんですね。
このタイトルと歌に出てくる「諸鈍」は奄美大島の南にある加計呂麻島にある地域なのです。

さらに、「諸鈍」が歌われるものでは、「しゅんどう」という舞踊で歌われる「しゅんどう節」があります。
歌詞は

しゅどぅんながはまに(諸鈍長浜に)
うちゃいふぃくなみぬ(打ち寄せて引く波は)
しゅどぅんみやらびぬ(諸鈍の娘さんの)
みわれはぐち (笑っているときの美しい目と歯)

というものです。

さて、これらも歌は奄美大島では「諸鈍長浜節」の歌詞として歌われます。
そして、この歌の舞台となっている加計呂麻島の諸鈍集落の入口の大屯神社の向かいにその歌碑があるそうです。
歌碑にある歌詞は以下のとおり。

諸鈍長浜ぬ長浜に 打上ぐぃ引く波や (諸鈍長浜に打ち上げて引く波は)
諸鈍みやらぶぃぬ 笑い歯ぐき (諸鈍の娘さんの笑顔の美しい歯のようだ)

諸鈍ぬ長浜や 大和がでぃとゆむ (諸鈍の長浜の美しさは大和まで評判が響いている)
諸鈍みやらぶぃや 島中とよむ (諸鈍の娘さんの美しさは島中に評判が響いている)

浦々ぬ深さ 諸鈍の浦深さ (海の深さといえば、諸鈍の海の深さ)
諸鈍みやらぶぃの うむぇぬ深さ (それより深いのは、諸鈍の娘さんの思いの深さ)

諸鈍みやらぶぃや 雪のろぬ歯ぐき (諸鈍の娘さんの雪のような白い歯)
何時が夜の暮れぃて 御口吸わな (はやく日が暮れて、くちづけしたい)

というもの。
この歌は第二回の大島征伐の時に琉球兵が、諸鈍の娘さんと恋仲になり、作った歌という伝説があります。
加計呂麻島で作られた歌が海を渡り、琉球王朝の古典芸能になっていったのです。
奄美と沖縄の深い縁が感じられますね。

さて、今回はここまで。
せっかくなので旅先で撮った奄美の風景の写真をご覧ください。

次回も奄美編です。お楽しみに!



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