さて、今回は雪の歌その2です。
前回は雪の歌の①~③までを紹介しましたが、今回は④辛いものや試練を雪に例えるを紹介します。
それでは、ものがたりをはじめましょう。
前回は雪の美しさや幸福の象徴としての雪を紹介しましたが、雪がもたらすものはいいことばかりではありません。
雪は冷たくて、草木も枯らします。人も動物たちもただただ堪え忍ぶしかないのです。
みちてぃらす つぃちや(道を照らす月は)
くむに かくりたい(雲に隠れてしまった)
いちゃすぃ わきでぃゆが(どうやって踏み分けて出ようか)
ゆちぬ やまじ(雪の山路を)
これはおそらく頼みとする師を失ったときの歌だろうと言われています。
道を照らす月もなく、ただただ寒い雪の山道を迷っている絶望感がつたわります。
あわり くとぅぬふぁん(哀れで言の葉も)
しむに かりはてぃてぃ(霜に枯れはてたように尽き)
わちむ さらさらとぅ(私の心はさらさらと)
ゆちどぅ ふゆる(雪が降ったかのようだ)
詠んだ人は保栄茂親方(びんうぇーかた)という人で士族です。
この歌は大切な人との別れで、心が凍ってしまうほどの悲しみを詠んだ歌ですが、言の葉が霜に枯れ果てるという表現は、まさに和歌の縁語のようです。
このように冷たくて、寂しくて、辛い様子を詠うための雪もあるのです。
そして、最後に紹介するのは雪を辛いものとしていますが、その先には希望もあるということを詠んだ歌です。
今年は新型コロナウイルスが猛威をふるい、私たちの生活も一変しました。
今なお、たくさんの人が辛い思いをしています。
そんな今年だからこそ、この歌を紹介して、来年は笑って過ごせる年になるように願います。
うみでんすぃ ゆちに(梅でさえ雪に)
つぃみらりてぃ あとぅどぅ(閉じ込められてあとにこそ)
はなん にうぃ ましゅる(花も匂いが一層増すもの)
うちゆ でむぬ(この世もまさにその通りだ)
この歌は古典音楽の赤田花風という歌でも知られています。
辛い思いをしてこそ、花はかぐわしく美しく咲くのです。
今は雪の下で耐えているような辛さでも、きっといつかは春がやって来て、雪を溶かし、花を咲かせることができると思います。
来年は嬉しいことが雪のようにつもり、そして春の花のように朗らかに咲ける年がくることを祈願して、今年の投稿を締めくくります。
では、ものがたりはおしまいです。
皆さま良いお年を。